■ 1,700万円を失いかけた男..『パート2』
雑記 恐る恐る、ご主人の顔を覗いて見ると、顔を下に向けてはいるが、
その表情は完全に笑っている。
このような方と何を争っても、きっと勝ち目はないのだろう。
その後は、ゆっくりと顔を上げて、本当に微笑したままだ。
我々の方がむしろ、早めに法的手段に移行しましょう、と言う外は無い。
それについて、ようやく同意していただいたような形となった。
それから数日が経ち、意外とあっけない形で2件分は一挙に解決した。
一瞬にして、約12,000,000円の滞納賃料が入金となったのだ。
その報告に再度訪問して、地主さんの顔をまた見る事が出来る。
ある程度、予想はしていたものだが、喜びの表情は見せてはくれなかった。
『そうですか、(お金が)入りましたか...』
それ以上でも、以下でも、後はまた何も言わない。
そして一瞬だが、少しだけ神妙というか、寂しそうな表情を見せてくれた
ことの方が強く印象に残った。
もしや、滞納者に無理をさせて支払ってもらったのか、とでも思われた
のだろうか...
奥様の言う通り、弁護士による催告書及び契約解除通知が効いたのだろうか、
それとも相手がお金を留保していたのか、本当のところは分かる術もない。
地主さんに徳分があったから、それが単に元に戻って来たに過ぎないのでは
ないか、そう思ったのは私の見当違いなのか。
それにしても、失いかけていた多額の入金があった男の反応には、
どうしても見えなかった。
残るもう1件は係争中となっているが、これもいずれ落ち着くところに
落ち着くだろう。
そう思いながら、見事に開け放たれている門を自由に出る。
その脇では小学生の男の子2人組が無邪気に虫取りをして遊んでいた。
到底足元にも及びもしない。
自分がその虫のよう、非常に小さい存在に見えた..