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■ 刑事さんは突然に...

 ラブストーリーは突然に、という事であれば諸手を挙げて喜ぶものだが、
刑事さんは突然に、しかも2人組で事務所にやって来た。

と、いう事になれば当然に、ストーリーの展開はまるで変わってくる。

 取り次いでくれた人から刑事さんの名刺を受け取ると、山梨県警だ。
高速道路をブッ飛ばしても軽く2時間はかかる距離感である。

 少し訝しい気持ちになるも、刑事さんを目の前にすると一変した。
頭をペコペコと下げ、両手は前に揉み揉みの情けない姿であったのだろうか、
その2人はカウンター越し、かすかに微笑している。

 聞けば、ある事件の容疑者の身辺調査を内偵していたところ、当社が運営
しているレンタル私書箱を契約している事が判明したため、その契約書類の
提示と実際に使用している私書箱を検分させてもらいたい、と言うのだ。

 いつの間にか、目の前には警察手帳が見事に開かれている...
その中のバッジは中学生でも本物だと分かるような、重厚な光を帯びていた。

そんなこんなで、私の運転する車で現場に向かうことに相成った。

 要は突然に、生まれて初めて刑事さん2人を後部座席に乗せて運転する事に
なるのだが、これがえらい緊張を強いるものだ。

 シートベルト、信号の変化、歩行者への配慮、運転速度及び携帯電話の
着信など、次から次へと気になる事が頭の中をグルグルと回りだす。
愚問と呪文を繰り返す運転となり、車内のムードは当然に暗黒、いや沈黙..

パート2へ続く...

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